華やかな企画提案、格好いいデザイン、優秀そうなプロデューサー、安い見積もり。Webサイトのリニューアル業者を選ぶ際、これらを決め手にしてはいないでしょうか。
Web制作業界では、提案する会社と実際に制作する会社が異なるケースが多く、提案と制作の分断が、追加費用や納期遅延、品質不足につながることがあります。
本記事では、Webサイトリニューアル業者を選ぶ際に陥りやすい「5つの錯覚」と、本当に信頼できる業者を見抜くために必要な「3つの調査」について解説します。
目次
1. 見た目がきれいでも、Webサイトの欠陥は見えない
一見すると、きれいに完成しているWebサイト。しかし、本当に問題なく完成しているとは限りません。
Webサイトには、次のような問題が潜んでいることがあります。
- クリックしたリンクが切れている
- ページの表示に時間がかかる
- プログラムやHTMLにエラーが残っている
- ユーザーが欲しい情報を見つけられない
- 問い合わせや購入までスムーズに進めない
欠陥住宅であれば、住んでいるオーナー自身が異常に気づけます。一方、Webサイトの欠陥は、オーナーである企業には見えにくいという特徴があります。
その欠陥に先に気づくのは、実際にWebサイトを利用するユーザーです。
しかも、ユーザーは「リンクが切れていました」「ページが使いにくかったです」と、わざわざ企業へ教えてくれるわけではありません。必要な情報を得られなければ、何も言わずにWebサイトを離れ、競合企業のサイトへ移ってしまいます。
Webサイトの欠陥をオーナーが把握しにくいという特性は、Web制作業界が産業としていまだ成熟しきれていない一因でもあります。

2. 知っておきたいWeb制作業界の実態
契約した会社が、実際に作っているとは限らない
Webサイトのリニューアルを依頼したとき、契約した会社が企画からデザイン、コーディング、プログラミング、テストまで行うと思っていないでしょうか。
実際のWeb制作業界では、営業や企画、マーケティング、ブランディングを行う会社が案件を受注し、デザインやコーディング、プログラミングなどの実制作を、中小の制作会社や個人、フリーランスなどへ外部委託するケースがほとんどです。
つまり、発注企業が契約した会社と、実際にWebサイトを作る会社や担当者が異なることが多いのです。
契約した会社の担当者が、優れた企画を提案してくれたからといって、その会社が企画を実現する制作能力まで持っているとは限りません。

提案と制作の分断がトラブルを生む
問題は、提案する側に、実際のWebサイト制作に関する十分な知識や技術がない場合があることです。
提案段階で実現方法や必要な工程を正しく把握できていなければ、次のような問題が起こります。
- 必要な作業が見積もりから漏れる
- 制作開始後に追加費用が発生する
- 当初の予算から数十%、場合によっては2倍近くまで費用が膨らむ
- 制作スケジュールが大幅に遅れる
- 提案内容を制作現場で実現できない
- 責任の所在が曖昧となり、係争問題に発展する可能性も否定できない
さらに、企画提案書にSEOやAIO、アクセシビリティなどの施策が盛り込まれていても、それらがWebサイト全体へ十分に実装されているケースはほとんどありません。
企画書に施策名が記載されていることと、実際のWebサイトへ正しく実装されていることは別です。
提案ができることと、実際に作れることは同じではありません。

3. Webサイトリニューアル業者選びで陥りやすい5つの錯覚
Webサイトリニューアル業者を比較するとき、多くの企業は、提案時に見えやすい情報を重視します。
しかし、企画提案力、デザイン、SEO・AIOなどの施策、プロデューサーの印象、最初に提示された価格や納期だけでは、その会社が本当に高品質なWebサイトを作れるかどうかは判断できません。
ここでは、業者選びで失敗する「5つの錯覚」を解説します。
錯覚①:企画提案力
華やかな企画書や説得力のあるプレゼンを見ると、「この会社なら優れたWebサイトを作ってくれそうだ」と感じるかもしれません。
しかし、企画を提案する能力と、その内容を実際に設計・制作する能力は別です。
どれほど魅力的な企画でも、後工程の制作を配慮した企画でなければ実現性に乏しいものになります。発注者が、プレゼンだけを見て企画の実現性まで判断することも困難です。
企画提案力だけで選ぶのではなく、少なくとも、その会社が開発・制作のノウハウを持っているかを確認する必要があります。

錯覚②:デザイン
格好いいデザインのWebサイトが、良いWebサイトとは限りません。
Webサイトで重要なのは、ユーザーが求めている情報へ容易にたどり着けることです。掲載されている内容を理解でき、問い合わせや資料請求、商品の購入など、企業が求める行動へつながらなければなりません。
どれほど美しいデザインでも、情報が見つけにくい、内容が理解しにくい、操作方法が分からないWebサイトでは、成果にはつながりません。
見るべきなのは、デザインの格好よさではなく、使いやすさと成果です。

錯覚③:SEO・AIOなどの施策
企画提案書に「SEO対策」「AIO対策」「アクセシビリティ対応」と書かれているだけで、安心してはいけません。
提案書に記載された施策が、実際のWebサイト全体へ施されているケースは、ほぼ皆無と言っても過言ではありません。
たとえば、一部のページだけに設定が行われていたり、必要な項目が抜けていたり、公開直前に形式的な対応だけが行われていたりすることがあります。
確認すべきなのは、施策が提案されているかではありません。
提案された施策が、Webサイト全体へ正しく実装されるかを見極めることです。

錯覚④:プロデューサーの印象
窓口となるプロデューサーの能力や相性は、発注者にとって気になるポイントです。
説明が分かりやすい。質問への回答が早い。自社の課題を理解してくれる。このような担当者に出会うと、その人へプロジェクトを任せたくなるものです。
しかし、プロデューサーの実際の能力を、プレゼンや打ち合わせだけで判断することはできません。
また、Webサイト制作は、プロデューサー一人で完結する仕事ではなく、アーキテクト、デザイナー、コーダー、プログラマー、テスト担当者など、プロジェクトの規模によっては、総勢数十名から数百名が関わります。
一人の担当者の印象より重要なのは、制作工程や品質基準が組織として標準化されていることです。
- 制作工程が明文化されているか
- 各担当者の役割が定められているか
- 品質基準が統一されているか
- テスト方法が標準化されているか
- 担当者が変わっても同じ品質を保てるか
プロデューサーの印象だけで判断せず、制作現場と品質管理の仕組みまで確認しなければなりません。

錯覚⑤:価格・納期
最初に提示された見積金額が安く、納期も短ければ、魅力的な提案に見えるでしょう。
しかし、安い見積もりは、本当に効率化によって安くなっているのではなく、必要な作業が抜けているだけのことがほとんどです。
たとえば、見積もりに次の項目が含まれていないことがあります。
- SEOやAIOに関する設計・実装
- アクセシビリティ対応
- コンテンツ移行
- 各種デバイスでの検証
- フォームやプログラムのテスト
- 公開後に発生した不具合の修正
仕様や作業範囲が曖昧なまま提示された低価格・短納期は、制作開始後の追加費用や納期遅延につながります。
確認すべきなのは、価格の安さではありません。見積もりが適正な作業内容と条件に基づいているかです。

4. 本当に信頼できるWeb制作会社を見抜く3つの調査
企画提案や見た目の印象だけでは、Web制作会社の実力を正しく判断できません。
本当に信頼できるWebサイトリニューアル業者を見抜くには、次の3つの調査が必要です。
- 見積もり内容を精査する
- 制作実績の品質を診断する
- 制作現場と品質管理体制を確認する
調査①:見積もり内容を精査する
見積書で見るべきなのは、最後に記載された総額だけではありません。
少なくとも、次の項目が具体的に記載されているかを確認します。
- 作業項目
- 数量
- 単価
- 対応範囲
- 対象外となる作業
- 発注者側が担当する作業
- 追加費用が発生する条件
各社から提出された見積もりを比較する場合は、仕様と条件をそろえることも重要です。
一社はコンテンツ移行やテストまで含み、別の一社はデザインと制作だけという状態では、総額を比べても、どちらが高いのか、安いのかは判断できません。
要件だけでなく仕様を細かく決め、各社へ同じ条件で見積もりを依頼する必要があります。事前に仕様を決めきれない場合でも、作業項目、数量、単価、対応範囲が細かく記載されているかを確認してください。

調査②:制作実績の品質を診断する
制作実績を見るとき、有名企業の名前やトップページのデザインだけを見てはいけません。
制作実績として掲載されているWebサイトを実際に操作し、技術面や使いやすさを診断します。
確認する主な項目は、次のとおりです。
- ページの表示速度
- リンク切れ
- HTMLなどのエラー
- SEO施策の実装状況
- AIO施策の実装状況
- アクセシビリティへの対応
- W3Cに関する技術品質
- スマートフォンでの表示
- 問い合わせフォームなどの動作
- ユーザーが情報へ到達しやすいか
制作実績は、格好いいかどうかを眺めるためのものではありません。
その会社が、実際にどの程度の品質でWebサイトを作っているのかを診断するためのものです。

調査③:制作現場と品質管理体制を確認する
3つの調査の中で、最も重要なのが、制作現場と品質管理体制の確認です。
まず、実際に誰がWebサイトを制作するのかを確認します。
- 契約する会社自身がどこまで担当するのか
- どの工程を外部へ委託するのか
- デザインは誰が行うのか
- コーディングやプログラミングは誰が行うのか
- テストや検査は誰が担当するのか
- 最終的に誰が品質へ責任を持つのか
さらに、制作工程や品質基準が、組織として標準化されているかを確認します。
- 共通の制作ルールがあるか
- ワークフローが定められているか
- 制作依頼書や仕様書が整備されているか
- 品質基準書があるか
- チェックリストが運用されているか
- テスト方法や合格基準が決められているか
- 外部委託先にも同じ基準を守らせているか
書類上で「品質管理を行っています」と説明されるだけでは不十分です。
可能であれば、実際に制作現場へ足を運び、どのような人が、どのような工程と品質基準でWebサイトを作っているのかを、自分の目で確認することが重要です。

5. まとめ:企画提案だけでなく、制作したサイトと制作現場を見る
Webサイトリニューアル業者を選ぶためには、企画提案の内容や担当者の印象を見るだけでは不十分です。
つまり、完成したサイトと、品質を生み出す制作の仕組みの両方を見る必要があります。
しかし、見積もりの妥当性、SEOやAIOの実装状況、アクセシビリティ、技術品質、制作体制などを、専門知識のない発注者だけで正しく評価することは、事実上不可能です。
Webサイトリニューアル業者選びに迷ったら、ATLAS WEB総合研究所へご相談ください。
この記事のおさらい(よくある質問)
Webサイトリニューアルの業者選びで陥りやすい「錯覚」とは何ですか?
華やかな企画提案力や美しいデザイン、表面的なSEO施策、プロデューサーの印象、そして安い見積もりや短い納期だけで判断してしまうことです。提案ができることと実際に高品質なサイトを作れることは別であり、これらの見えやすい情報だけでは業者の真の実力は測れません。
Web制作業界では、契約した会社が実際にサイトを作るとは限らないというのは本当ですか?
はい。営業や企画を行う会社が案件を受注し、実際のデザインやプログラミングを中小の制作会社やフリーランスへ外部委託するケースがほとんどです。この「提案と制作の分断」が、追加費用の発生や納期遅延、品質低下といったトラブルを引き起こす原因となっています。
本当に信頼できるWeb制作会社を見抜くためには、どのような調査が必要ですか?
単に提案書を見るだけでなく、1) 見積もり内容の細かな精査、2) 実際の制作実績の技術的品質(表示速度やエラーの有無など)の診断、3) 誰がどう作るのかといった制作現場と品質管理体制の確認、という「3つの調査」を自らの目で行うことが不可欠です。
